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そしてミシリと音を立てながら廊下を渡り、庭に置いてある下駄を履いて外へ。
「じゃぁ行ってくる」
そう言いながら腕を上げ、顔の横で軽く手を振った。振り返りはしない。その必要はないだろう。
柊鬼はゆっくりと歩きながら木の枝にとまった小鳥に視線を向ければ、逃げるように飛び去ったのを見て嗤う。仲間が来なかったのが計算外だったのか。それとも敵わないと思い尻尾を巻いて縄張りを明け渡したのか―――どちらにしても鬼とそれ以外なんて、そういうものだ。
カラン、コロンと下駄の音を響かせながら柊鬼は庭にある大きな樹の下を目指し歩いて行けば、毎年と同じようにそこには彼がいた。
大きな樹の幹に寄り掛かり、気持ち良さそうに風を浴びている。
掛けている眼鏡がずれたのか、左手の中指でそれを直せば此方に気付いたようで「柊鬼っ!」と大きく腕を振り名前を呼んだ。それも毎年と同じ光景で、なんとなく柊鬼は息を長く吐いてから「よう志貴!」と笑みを向ける。
「なんか年々来るの遅くなってない?」
「年々天斗の話しが長くなンだよ」
「なにそれ。与波さんそんな歳じゃないでしょ」
「いいや、アイツは精神年齢がオッサンなんだよ」
「またそんなこと言って・・・」
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