ヒトシズク

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「りゅーくんってさあ、寒がりじゃなかったの?」  不意にユキナがそんなことを言う。  俺はそっちに目もくれず、なんでと聞き返す。 「だってのんたが、普段はアタックしても超素っ気ないのに、なんか冬になると急に甘えてくるんだよねって言ってたから。てっきり寒がりなんだと思ってた」 「のんた?…ああ」  ハルノか、と俺はまたすぐ興味を失くす。  元カノ同士が仲いいとそういうどーでもいい情報がいつの間にやら伝わってるわけだ。だる。  早いとこ次を捜そうと心に決める。  でもさすがにアテのない段階からタイムラグなしは厳しいから、この冬は我慢しよう。どうせこいつもこいつで同じような肚だろうしな。  吐く息が白い。  数センチ積もった雪が裸足をいたぶり、もはや感覚がない。  す、とカッターを引くと、足許に点々と、色鮮やかな赤が咲いた。 「なに?黒魔術やってんの?」  こたつの中、タバコ片手にユキナがからから笑う。雨戸閉めればいいのに、ほんと変なやつだ。  別に見世物じゃない。おかしくなったわけでもない。どうせ元々おかしいんだから。  俺の血が雪を解かす。  あの時はこんなもんじゃなかった。  身体中から抜け出ていった赤が、眩いばかりの白をあっという間に汚した。  あのひとの、腕や胸元も。
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