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始めたビジネスが最初の目的からどんどん離れて行くことには、ほんまは納得してなかった。でも加速がついてしまったもんは、もう止められなかった。俺は多くのものを得て、同じくらいのものを無くした。
「ちょっと休憩してたん?」
ミコはそう言って、また俺を下から見上げる。休憩、そうなんかな。
「次のヨージが楽しみやった。」
次の俺・・。
「それはみんなやわ。」
またいつのまにかそばに来ていたタマが言う。
「リク、覚えてるか?」
誰かと話していたヨーイチも戻って来ていた。
リク・・ヨーイチの弟。
『エレギとエレベとどっちがカッコええか言うたろか?』
走り去る後ろ姿を思い出す。ガールフレンドの名前はなんやったかな。
「リク君、音楽やってるねんよ。」
ミコの言葉にひとつのことを思い出した。
「もしかしたら〈Frankens Lovers Soul〉のベース・・・」
確か『渋谷リク』。ベースの渋谷と聞いて笑ったんや、書類だけ見て。
ヨーイチがニヤッと笑う。
「CEO.に会うことはなかったみたいやけどな。」
まさか、そんな近くに。
「あいつら、ドラムの首すげ替えられるの断って干されとる。」
俺のまったく知らないところで、いろんなことが動くようになった。CEO.なんて肩書き付けられて、現場から離れてなんもわからんようになってた。そんなことが。
「すまん。」
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