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まるで浦島太郎だ。
久しぶりの日本。家にも帰らず、そのまま新幹線に乗ったのは、インドで死にかけたことも関係あるのかもしれない。
はがきにあったタマの文字。
『ミコも来るよ』
その名前を見て思ったのは、このまま会わずには死にたくない。どんなに責められても、呆れられても、嫌われていても。
会場の店にようやく辿り着いた。
受付の女が驚いた顔をする。
「河原くん? 久しぶりやね!」
俺はとりあえず少し笑う。
おまえは誰だ? キラキラと胸元で輝いてるのはダイヤか? おまえは誰だ?
そのまま奥に入った。店の奥は壁がなくガラス貼り。高層ビルからは下方に開拓中の土地が広がる。中央郵便局はどっちだ? 窓から見下ろしたくてそのまま奥に進んだ。
「陽二! おまえ生きとったんか!」
その声に振り返る。おまえは誰だ? 俺は知らない、こんな腹の出たハゲ。おまえは誰だ。無言でそいつを見つめた。
「まあ、ゆっくりしていけよ。商売の話もあとで聞かせてくれ」
腹の出たハゲはそう言って離れていった。あいつは誰だ?
「まったく、あいかわらずやね。大人なってんからちょっとは丸くなりいや」
呆れたような声に振り返る。
タマ。まったく変わらない。黒髪おかっぱに眼鏡。ほっとしていた。タマに会ったくらいで、悔しいけれど俺はほっとしていた。
「タマか?」
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