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「はあ? 忘れたとでも?」
「いや、タマだ。」
「ヨージ、変わらんね。性格も、トゲも、見た目も」
タマは俺にワインのグラスを渡す。血のような赤。
「さっきのは委員長やった高橋くんやん。だいぶ太ったけど。頭もキテルけど」
「高橋は眼鏡やろ」
大阪弁が出ていた。使うのは何年ぶりだ?
「コンタクトにしたんやん。大学の時やからだいぶ前やわ。ヨージ、同窓会こうへんかったから知らんのやわ。大学の時はかっこよかってんで。ちょっとは」
タマだ。いつもシニカルに締める。
「おまえも変わらんな。見た目も性格も」
本当に笑えた。どのくらいぶりだ? こんな風に笑うのは。
タマとグラスを合わせて、俺は血の色のワインを飲みほす。そしてもう一度、店の中をぐるぐると眺めた。少しうつむき加減にその姿を探した。会えるはずはないか。
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