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しょっぱい、な。
膝の上の小さな箱には宝石のようにツヤのあるチョコレートが、ちょこんちょこんとかしこまって並んでいる。
1つだけ空っぽになった隙間がわびしいが、そこを埋めていたチョコは俺の口のなかで溶けて小さくなっている。
甘くて、苦くて、しょっぱい。
チョコを味わいながら、広くなってしまった家の中を見渡す。
数日前まで用途不明の雑貨に溢れていたとは思えないほど片付いた部屋。
自分の家なのに、俺の物はこんなにも少なかったのかと驚いた。
寒々しい部屋に、知らず知らずため息がもれる。
うるさくてかなわないと思っていた日々は確かに幸せだったのだと気づく。
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