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チョコをもう1つ摘まんで口に入れる。
甘いものが苦手な俺のためのビター。
でもやっぱり甘くて、そしてしょっぱい。
目の奥がつんとして、思わず鼻をすする。
俺は立ち上がって、仏壇の前に残りのチョコを供え、手を合わせる。
遺影には若いままの妻の笑顔。
なぁ、母さん。
お前があの子を残して亡くなってから、二人でなんとかやって来たよ。
小学生の娘を抱えて男手一つじゃ至らないことだらけだっただろうけど、人を愛せる優しい子に育ったよ。
ウェディングドレスがよく似合ってた。
白無垢はお前に負けるけど。
新郎にあげりゃいいのに、あのバカ、披露宴でサプライズとかいって俺にこのチョコを渡してきたんだ。
世界で一番好きな人にって。
いい話だと思うだろ?
旦那は別格なんだってよ。
なんだそれ。
……チョコはなんかしょっぱいよ。
部屋は広くて寂しくなっちまった。
でも、やっぱり甘ったるいし、俺は幸せだよ。
あの子が幸せになるすがたを見られたのだから。
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