第1章

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小さな子どもだったとき、レストランに行くのは一大行事だった。 誕生日、クリスマス、特別なイベントのときだけぼくたちはレストランに出かけた。前日の夜は興奮して何度もメニューを確認した。 メインディッシュは何?デザートを食べてもいい? 鹿児島の田舎道を車で揺られながらずっと父を質問攻めにした。どんな料理が、どんな順番で出てくるのか細かく尋ねた。父はぼくの質問に丁寧に答えた。 レストランの給仕が車で来たぼくたちのために扉を開けて待っていてくれた。革でできた予約帳に名前を見つけて、席に案内してくれる。ぼくは壁にかかった油絵だとか、薄暗い間接照明だとかに目を奪われる。白いテーブルクロスや、綺麗に磨かれた食器に胸を踊らせた。
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