第1章

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鹿児島行きの飛行機に乗り、ベルトを締めた。 近くの席の人達が荷物を棚に入れたり、身支度をしている。顔の半分をマスクで覆った乗客たちが席につく。ぼくはあわただしい機内から目をそむけた。窓側の席で滑走路を眺めていると、猛烈な眠気が襲ってきた。 浅田の案件を処理していたせいだ。ハードな話しあいの場があり、その後の処理があった。今日一日を休むために二日ぶんの仕事を一日でこなしたツケがまわってきたのだろう。隣に背広を着た大柄な男が腰を下ろすのを横目で見ながらぼくは目をつぶった。 浅田は精力的に仕事をこなす機械メーカーの役員で、ぼくが彼から相談を受けたときには上海から帰国した直後だったし、離婚調停に入ったときはハノーヴァーへ会議のために出張に向かうところだった。
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