第1章

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国内線ターミナルの車寄せで浅田と握手をして別れた。 飛行機を待つ間、ぼんやりとソファに座って外を眺めていた。空は完璧に晴れ渡っていて、四月の暖かな日差しの下で生き生きと動き回っていた。国内線の出発ロビーはスーツケースをひいた旅行者たちがぼくのそばを通り過ぎていった。平日の昼間だ。スーツ姿のビジネスマンが目立つ。若い女が二人、オートウォークに乗って話をしているのが見えた。ひとりは青いワンピースを着た女で小さな赤い機内持ち込み用のスーツケースを転がしていた。ぼくは彼女がオートウォークで自分のターミナルへ向かい、柱の影に隠れてしまうまで目を離すことができなかった。 本来は愛梨と一緒にこの飛行機に乗るはずだった。 JALの空港職員の女の子は予約番号をコンピュータに打ち込むと、ぼくの方をちらりと見て、同乗者がいないことについて一言二言言及した。つまり、当日のキャンセルの場合、返金はできないことを了承願いたいというようなことだ。ぼくはそれに同意した。彼女が来れなくなったのはJALの責任ではないし、返金できないのはその女の子の責任じゃない。
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