第10章

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「ふうん。愛の証明が爆発物とはね」 頭一つ高いところから まだ不服そうにテヨンは鍋の中を覗き込み言った。 「あ、それ……」 「俺の方は――こんなもん持ってきて損したな」 意地悪く口端を歪める。 後ろ手に隠していたのは薔薇の花束だった。 「ピザかチキンの方が良かったみたいだけど」 照れ隠しかそう皮肉りながら テヨンはぶっきらぼうに僕に花束を手渡す。 「あ……」 正直 花束を貰えるなんて思ってもなかったから。 僕は石像のように立ち尽くすだけで 気の利いた言葉のひとつも出てこなかった。 「何?感動して泣いてんの?」 からかうように顔を覗き込まれてようやく 「なっ……泣いてなんかないよ!」
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