第10章

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背を向けて気持ちを落ち着かせると 「こいつを片づけなくちゃ」 何事もなかったフリして 僕は汚れたコンロに手を伸ばした。 「本当は何を作ったの?」 「たいしたもんじゃないって……」 「教えてよ」 だけどもテヨンが 後ろから僕を甘く抱いたまま放さないから。 「チゲだよ……」 完全な失敗作を目の前にして 恥ずかしながら答える。 「でもおまえの言うとおり、チキンかピザの出前を頼まなきゃ」 真新しいキッチンを汚した鍋を 流しに放り込もうとした時 「捨てないで」 「え?」 僕の腕を掴んでテヨンが言った。 「誰かに飯の用意をしてもらったのなんていつ以来か――」
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