第10章

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生徒指導室――。 指導するべき生徒が現れるのを待つ間 僕の方がいくらも緊張していた。 やがて長身の影が入り口の磨りガラスに映り込み 気怠そうに二度三度扉をノックすると。 「――入って」 声を振り絞りやっとのことで僕は答えた。 「失礼します」 わざとらしいほど礼儀正しく挨拶し カン・テヨンは身体を折り曲げるようにして 入り口から顔をのぞかせた。 僕はその間ずっと 今日の事は校長の命令で僕の意思ではない事 姑息な手を使っておまえを呼び出したりは断じてしていない事。 「座りなさい……」 声に出して言えない分 せめて教師らしい態度で示そうと躍起になっていた。
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