銀桜の木の下で

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「さぁ、今日もリハビリがんばりましょう」 私は岸井さんの姿を見るなり、布団を頭から被りまるで子供のように駄々をこねた。 「今日は寒くて足が痛むから、リハビリはいいです」 「そうね、今日は寒いよね。さっきね、他の患者さんの部屋から窓の外を見たら、もうちらほら雪が舞い始めていたのよ。このあたりに雪が降るなんて三年ぶりね。私が育ったところは、毎年雪が降るところだったから、雪が降ると嬉しいの」 布団の隙間からこっそり岸井さんを見ると、窓の方を懐かしげに見つめていた。 それに気づいたかのように、岸井さんは私の方に視線を滑らせた。 「雪が積もったら、一緒に見に行きましょう」 そう言って、岸井さんは微笑み、また後で来ると車いすを置いて病室を出て行った。 ベッドから起き上がると、窓の向こうには小さな雪が降り始めていた。
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