特別な日

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一一カランコロン 「いらっしゃいませ」 聞き慣れたベルの音を鳴らしながら店に入る。同時に店員がやってくる。 「珈琲を1杯」 「かしこまりました」 入店して早々、珈琲を頼むとお気に入りの席へ向かったが、今日は別のお客さんが先に座っていた。仕方なく隣の席へ腰掛ける。 が、続きが気になっていたはずの本は一向に読み進まない。どうしても隣の席に目がいってしまう。 いけないとわかってはいるが、視界の端に隣に座る人を捉えてしまう。 せっかく良い日になると思っていたのに、貴方のせいで台無しよ、と言いたくなった。 その時、 目が合ってしまった。 とっさに目をそらす。もう、本を読むどころではなくなってしまった。珈琲を啜る。ダメだ、落ち着かない。 彼を確認する。 白のタートルネックがよく似合っている。王道だが、彼に薔薇の花束を持たせてみたいと妄想が膨らむ。 と、また目が合ってしまった。 しかし、今度は目をそらすことができなかった。 「あれ?もしかして…紫藤さんですよね?」
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