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朝のホームルームが終わり、僕たちは整列して会場となる体育館へと足を運ぶ。
一歩足を踏み入れると、空気感が大きく変わったことに僕は気づく。
僕たちを出迎えたのは鼓膜を突き破るような騒音だった。上履きで床を叩き、口笛を吹き、大声を挙げる。1人2人どころの話ではなく、これを2、3年生の男子生徒1000人全員でやられるのだからかなわない。僕は全身の筋肉が硬直するのを感じた。
1年12組までの全新入生が入場を終えて全員が床に腰を下ろすと、場が一気に静かになった。
「生徒会長あいさつ」
司会の号令とともに学ラン姿で眼鏡をかけた、痩せ型の生徒会長が壇上に上がると、1000人の上級生から地響きのような拍手喝采が起こる。
生徒会長は右手のひらをかざし、聴衆を静まらせると、原稿を手に取った。
生徒会長は
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます」
そう言って笑顔で僕達の顔を見渡した。
「……と言うとでも思ったか?」
生徒会長の笑顔はその一言とともに凍りついた。そしてたちまちその表情が一変した。
「認めるわけがねーだろ!この野郎」
生徒会長は痩せた体からは似つかわしくないほどのドスの効いた声で僕たちを怒鳴りつけると、用意してきた原稿をビリビリに引き裂いた。木っ端微塵になった原稿用紙が宙に舞う中、1000人による拍手喝采が生徒会長に送られる。そしてその中から
「そうだそうだ!」
「認めねぇぞ!」
「もっと言え!会長!」
という野次がポンポンと飛び出す。
僕は悟った。
これは、歓迎の式ではない。
ここはもはや、完全なるアウェーの地だ。
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