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生徒会長はマイクを持ちながら壇上から降り、僕たちの方向へと近づいてくる。
「オメェらあんなにタラタラ入場しやがって!ナメてんのか!」
生徒会長の怒声に合わせて再度上級生側から大歓声が起こる。
「そして、俺には根本的な疑問がある!」
「何だー!」
また上級生側から大声が挙がる。
「どうして生徒会長の俺が立って話しているのにオメェらは座ってんだ!?」
生徒会長が腹の底から理不尽なフレーズを僕たちにぶつけた瞬間、再び拍手喝采が巻き起こる。
「そうだ!」
「立て!」
そんな声が束になって投げかけられる。
「オメェら全員立て!」
生徒会長がそうがなると、僕たちは全員起立した。その瞬間
「遅ぇぞ!」
「タラタラするな!」
「やり直し!」
そんな罵声が矢継ぎ早に飛んできた。
「遅い!もう1回座れ!」
生徒会長の号令に合わせて全員が座ると、
「もう1回だ!立て!」
また全員が立たされる。
「ダメだやり直し!もう1回座れ!」
罵声と怒号が飛び交う中、かれこれこのやりとりを繰り返すこと15回。1人の羽織袴を身につけて高下駄を履いた筋肉質の男が生徒会長の横へと歩み寄ってきた。
生徒会長はマイクを無言でその男に渡す。男がマイクを手に取った瞬間、会場全体が静まり返った。
「俺は寒梅高校応援団団長、轟健吾だ」
団長がそう名乗った瞬間、上級生側から大歓声が起こった。団長が右の手のひらを掲げると再び静かになり、轟は再びマイクを口に近づけた。
「今までの一部始終を俺は見ていたが、オメェらのような気合の入っていない奴ら寒梅高校の一員と認めるわけにはいかねぇ!」
団長が叫んだ瞬間、再び地響きのような声が体育館中に響き渡った。
「だから明日から俺たち応援団が寒梅の伝統をオメェらに叩き込んでやる!覚悟しておけ!」
団長はそう言い残して生徒会長とともに舞台袖へと退場していく。上級生側からは2人に盛大な拍手が送られた。
場が静まり返ると、司会の声が響き渡った。
「次は、新入生代表あいさつ。新入生代表1年8組 近衛信介!」
この空気の中で僕の名前が呼ばれてしまった。孟子は「千萬人と雖へども吾往かん」とか言ったらしい。でも、1000万人の10000分の1である1000人相手でも、どうしたらいいのか分からない僕がそこには居た。
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