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拍手は鳴り止まない。暫くすると、掛け声がまた聞こえ出した。
「アンコール!アンコール!アンコール!アンコール!アンコール!アンコール!アンコール!」
本格的に頭がおかしくなるのを感じた。
この人達は、楽しんでいる。
僕が追い詰められているのを楽しんでいる。
先生達もこの光景を見ているのに、止めに入らない。僕はもはや完全にこの空間の、そして自分1000人の上級生の餌食だ。
アンコールの声は止む気配がない。
僕は無言の圧力に押されて壇上にのぼった。
壇上に吹き荒れる拍手の暴風雨。壇上からは1000人の、否、1000体の鬼の姿を見渡すことができた。
僕は整理し直した原稿を再び開き、マイクに向かった。
「本日はこのような会を開いて僕たちの入学を祝ってくださり……」
「聞こえねーぞ」
「さっきと全く同じじゃねーか!」
「だからマイク取れ!」
響き渡る野次が僕の耳を貫いていく。そして、僕の中で何かが壊れた。
僕はマイクスタンドを口元から外す。すると、再び大歓声が起こった。
「もし僕たちがまだ入学生として認めてもらえない存在だとしても、いつか必ず認めさせてみせます。よろしくお願いします!」
僕はそう大声で叫び一礼をすると、足早にステージをあとにした。拍手は鳴り止まない。
「アンコール!アンコール!アンコール!アンコール……」
アンコールの声が響き渡る中、司会のマイク越しの声が響く。
「以上を持ちまして、対面式を終わります」
僕はやっとこのアウェー空間から解放された。
ほっとすると同時に、僕は腹の底から思った。
こんな奴ら、いつか見返してやりたい。
こんな奴らに負けるわけにはいかない。
今日1979年4月9日は、僕にとって本当に特別な、屈辱的な日となった。
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