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ああ、今日はなんて特別な日なんだろう。
僕は窓から差し込む朝日を浴びながら、そう思った。ベッドに横になったまま目を細めつつ外を見る。
綺麗に掃除された部屋の外から見える景色もとても美しいものだった。
木々の緑が生い茂り、鳥たちが空を舞い遊ぶ。人々の楽しげな声が聞こえ、その中に聞き覚えのある声を聞いた気がして、僕は急に胸が苦しくなった。
アイツと初めて出会ってもう1年も経とうとしている。随分長い付き合いだ、と僕は感慨深げにしんみりした。
初めて会った時はなんてムカツク、腹立たしい、嫌な奴だと思ったものだ。でもこう長く一緒にいると、変な愛着すら湧いてくる。不思議なものだ。
あー、あいたい。あいたいなぁ……。
僕は寝起きの体を気だるげに起こして、なんとかベッドの縁から足を降ろす。手すりに掴まって立ち上がり、ゆっくり歩いてトイレへ行った。用をたす。
再び寝室へと戻り、ベッドの上に壁に背を預けて座った。再度窓の外を見降ろし、聞き覚えのある声を探す。でも、知ってる人は誰もいなかった。
残念に思いながら、心の中で何度もあいたい、あいたいと繰り返す。もはや口癖になっていた。
僕は心臓当たりを片手で押えながら、アイツの事を考える。
……アイツは唐突に僕の前へやってきた。
僕はそのことを知って、あまりのことに驚いた。予想外にもほどがある。まさか自分がアイツと出会うことになるなんて、思ってもいなかったのだ。
しかしそれは事実で、気付くとアイツはいつも僕の側にいた。僕は苦々しく思いながらも、アイツと上手に付き合う方法を探した。
でもアイツの機嫌が悪いと僕の機嫌も自然と悪くなる。アイツの機嫌が良くても、僕の機嫌は悪くなった。相性最悪と言ってもいいだろう。
しかしずっとアイツを嫌っていながらも一緒に過ごしていたら、ふと僕のアイツに対する価値観が変わったのだ。見方が変わったのかもしれない。
それ以来、僕はアイツのことが、気に食わないけれどそれなりに上手に付き合っていけている、気がする。たぶん。おそらく……。
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