第1章

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 ――普通だったよね、わたし。  今まででいちばん、話ができた。  いろいろなことがあった一日だったけど、今ので帳消しだよ。 「ちはるー」  遠くから、でっかい声でわたしを呼んだ。 「なにー?」  遠くへと、でっかい声を悠太くんに返した。 「おれは千晴に恨みがあるぞー。よくも赤いTシャツを着てくれたなー!」  フラッシュバックしたのは、トマトについて『色とか。全部』と答えたときの顔。 「それがどうしたのー?」 「おまえのせいで、おれはおれの赤いTシャツを着れねーじゃんかよ。ペアルックが怖くて着れねーじゃんかよ!」  笑った。  むこうも笑った。  なあんだ、そういうことだったんだ。 「許すー」 「なにをー?」 「ペアルックをー。もし冷やかされたら、しかとしようねー」 「なんだそりゃ」  雨露をはじいて、鮮やかにサルビアが咲いている。  その色を見るたび、わたしはいつも思いだす。  最初の恋を。  とりあえず、今度の傘も赤にしよう。  END.
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