思い出の少ないきみを想う

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 1月13日、そしてこの作品を書いている今日は私にとっては、(キミ)を想う特別な日。 キミとの数少ない思い出。 一つ目はまだキミが生まれて母と病院に居たときに、誰かが教えるわけでなく発した兄の言葉。 「ぼくん()の赤ちゃん、お母さんより先に帰って来るんやで!」 その言葉の通り、キミは母を病院に残して先に家に帰ってきたね。 帰って来たキミは大きな声で泣くことはおろか、微動だにせず眠っていたね。 そんなキミの小さな冷たい身体を、何も解らない幼い私はゆさゆさ揺すり、たくさん話かけていたこと……。 二つ目。 火葬されたキミの未成熟過ぎてか細い骨を見て、子供のように泣きじゃくる母と、そんな母を震える身体と真っ赤な目で必死に抱き支える父の姿。 仏間に飾られた写真は、偶々看護婦さんが撮ってくれたキミの目が開いた瞬間のキミの唯一の写真。 その写真が一時期、睨んでいるようで怖かったこと。
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