第27話

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第27話

目を開けるとそこには高い天井。 体は思うように動かない。だが、痛みはない。 目だけを動かし周囲の様子を伺うと、そこはどうやらどこかの宿屋の一室のように思えた。 広い畳の部屋の中央に自分の褥が敷かれている。 枕元には水の入った桶があり、枕元に自分の額から落ちたであろう手ぬぐいがあった。 「……………ここは…」 そう呟いた時、襖が開いた。 そこには小袖を来た菖蒲が立っていた。 そして安堵と驚きが入り交じる表情で恐る恐る近づいてきた。 「お目覚めですか……」 今にも泣きそうな震えた声だった。 「良かった……」 何故そんなにも自分を心配するのかわからなかった。 風魔に属する彼女にとって、伊賀忍である自分は敵のはず。現に夢幻との戦いで彼女へ半蔵の足止めのため、夢幻として現れた。 「……………ここはどこだ?」 「…ここは抜け忍の里の宿屋です。」 「………宵は?」 もう彼女を、夢幻とは呼ばなかった。 今更夢幻、なんて呼ばなくてもいい。 「……………宵様は………まだ……お目覚めになりません。」 「………………え?」 耳を疑ったが、自分を責めるように悔しそうに、悲しそうに言った菖蒲の言葉が嘘ではないと告げていた。 「なんで………」     
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