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愛実さんにチャラ男のウイルスがうつらないことを願ってパソコンを起動させると、ふと東雲さんが腕を伸ばし、何かを示した。
それが梶浦さんの机の上に置かれた卓上カレンダーを求めてることに気づき、手渡す。
「今日梶浦外出の日だね。SMグッズ専門店店長との対談」
「珍しく俺に行かせてくださいと懇願してた件ですか。・・・困りましたね」
よりによってこの日だなんて。
相手の方も忙しい合間をぬってスケジュールを空けているだろうに、当日にキャンセルというのはまずい。
「誰か代わりに行かないと」
自分の机にカレンダーを置き「うん」と首を振る東雲さんを見て、もう一度、心から「困りましたね」と叫びたくなる。
「小見さんって、SM小説大好きなんだよね」
「語弊のある言い方しないで下さい。私は西奴さんの作品が好きなんです」
「でも興味はあるでしょ」
この眼鏡が、人を陥れ無理難題を押し付け無茶振りを強要したがる性質なのは重々承知してるため、こんな流れになることは簡単に想像がついた。
しかし今回は質疑応答を繰り広げる取材ではなく、あくまでSMというテーマを沸かせる対談なのだ。
確かに西奴さんの作品、そして身近なSMコンビのおかげで私でもそれなりの知識はついている。
けれどその程度じゃ、本職の方が喜ぶような話はできない。
「そりゃこの雑誌に関わる身として無知ではいられませんけど」
「つまり興味があるんでしょ」
「・・・まあ、勉強はしないとと思います。でもこんな立派な立場の方と話を交えるのは無理ですよ!」
「うん、そうだね」
なんだこいつ
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