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「社長とは何度か飲んだことあるから。俺が代わりに行くよ」
「・・・はあ」
ただ単にSMへの興味を確認されただけ。
しかも不可抗力と言え肯定しちゃったし。
「あとよろしく」
もはや半目になっている私の前で、東雲さんは颯爽と上着を羽織りマフラーを巻き、靴音を響かせ去って行った。
あの手の振り方、数分前にも見た気がするんだけど。
やっぱりあいつら手を組みだしてる?
そろそろ本気で護身用の電流パッド頼もうかな・・・と日和くんのお店のサイトにカーソルを持って行きかけ、ふと気づく。
あ、今日まだ真野さんに挨拶してない。
目には入っていたのに、チャラ男と眼鏡のせいで声をかけ忘れていた。
「真野さん、おはようございます」
まあ、彼自身集中してる時は上の空で返される確率が高いので、挨拶が遅れたところで気にしないだろう。
「ん」と短く返される予想を立てながら、真野さんの方へ体を向き直したところで―――
絶句。
「真野さん」
「ん」
想像通りの返事はいつもよりはるかに小さく、喉の奥でくぐもった感じに聞こえる。
「・・・もしかして、風邪引きました?」
声だけでも普段と違うことが一発でわかるのに。
加えてこのほんのり赤く染まった頬、吐き出すたびに震えるような呼吸、うっすら汗ばんだ額。
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