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「なんで・・・ゴホッ」
「なんでって、どう見ても熱っぽい顔してますよ」
これをスルー出来る人がいたら相当非情か、もしくは鈍感である。
口呼吸なのも鼻が詰まってるからだろうし、問いかけの後に咳までされちゃ説得力の欠片もないんですけど。
「動いたからだよ」
「いや今微動だにせずパソコン見つめてましたよね。無理は・・・」
「この梶浦の分今日中に仕上げてくれ」
あ、強制終了された。
バサバサと放るようにデータを寄越され、仕方なく受け取る。
超を500はつけて良いほどの仕事人間である真野さんが、風邪を引いたなんて認めるわけないか。
ただでさえ梶浦さんも不在な今、その穴を埋めるための責任感は尚更増してるはず。
例え風邪のウイルスが社内中に広まり皆が倒れても屍累々を踏み越え、そして自身が同じモノと化してもパソコンの前から離れようとしないだろう。
真野さんはそういう人だ。
時にはその責任感が、周囲にとってどれだけ脅威となるかは別として。
とりあえず、マスクはして欲しいんだけど・・・
体調の変化を受け入れない相手に言っても無駄だろうな。
しかし真野さんの気持ちもよくわかる。
私だってちょっとやそっとの風邪じゃ薬を飲んで気合を入れて、普通に出勤するだろう。
仕事に穴をあけたくないし、それによって別の誰かに負担をかけたくない。
何より待っている読者のことを考えると、おちおち休んでいられないのだ。
が、無理を押し通すと結局ウイルスをばら撒きまくって、大惨事になる危険が半々の確率である。
責任感の線引きが難しいのはどの職種も同じだ。
ひとまずは真野さんの精神力と私の丈夫さに賭けることにして、このまま飲み込もう。
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