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「行こうか」 清十郎はそう言うと、私の手を優しく握る。 清十郎の指と私の指が絡み合う。 「うん」 私は頷く。 私と清十郎は手を繋ぎ歩き出した。 今日は行き交う人々が普段よりも多い。 やはり皆、夏祭りに行くのだろう。 浴衣を着ている。 その中にはカップルも多くいた。 でも、浴衣を着ているのは大体が女性だけで、男性はシャツにジーンズが多い。 すれ違う女性たちは、浴衣姿の清十郎をチラチラと見る。 複数人で歩いている女性たちが、すれ違った後に小声で清十郎について話すのが聞こえた。 学校では意識しないけれど、街中で他の男性と見比べると、やっぱり清十郎は格好良い。 目立っている。 何だか嬉しいような気がした。 もっとはっきり言うと、勝った気がした。 別に誰と競っている訳でも無いし、その為に清十郎と歩いている訳でも無い。 清十郎が誰からも見向きされなかったとしても、私は清十郎を格好良いと思うだろうし、心をときめかせるだろう。 でも、やっぱり嬉しい。 私は昔から、一人で考え込む人間だった。 清十郎と出会ってからは、色んな事を感じるようになった。
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