03.夏の夜の夢を

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しー、と唇に人差し指をあてて笑う。 そんな俺をじっと見つめたあと。 「……うん、なんか良いね、その響き」 満面の笑みで了解。左手の小指をたて、俺に差し出す。 「――」 一瞬考えた後、ああ、と頷き。 「離すぞ?」 「許す」 何様だお前。 笑いつつ、握られた手をほどいて小指をたてる。 これは二人だけの秘密だと。 「「――ゆび、きった!」」 約する為に。 あれは例えばサンタクロースのような、多分大人にとっては 鼻で笑ってしまうような類(たぐい)のものなのだろう。 「あの日、あの場所で映画の撮影してたんだよ」とか、 もしくは夢だった、で片付けられてしまうようなそんなもの。 けれど、子供である自分たちにとっては間違いなく貴重で。 だから、誰にも言わずにそっと仕舞っておく。 派手に騒いだり大人に告げればきっと壊されてしまうだろうから、     
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