01.あの、夏の日

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三十九度の蕩けそうな日に。 マリオカートで競い合う馬鹿が2人。 「あつー。だるー。」 かたわらで畳の上をごろごろ転がるイトコ。 赤いヒゲオヤジが主人公であるレースは俺のゴリラがゴールする寸前、 勝手に家に入ってきた野良猫が通りすがりに スーファミ本体のリセットボタン押していくという ありえない展開により両者痛み分け。 家の窓という窓を開けっぱなしにしてるもんだから 勝手に猫が入ってくる。これだから田舎の一軒家は。 「俺の住んでる所じゃ、考えられんよなあ」 無防備にすぎる。 それはそれとして。 「あーもー」 悔しがるイトコ。 「もうちょっとで勝てたのになあ」 いや待て。お前ドベだったろうが。甲羅にぶつかってクルクルしてたろうが。 「そこから華麗なる逆転劇ですよ。ニトロ使って」 ねえよ。それ別のゲームだよ。というかお前持ってたのバナナだろ。 ちりりん、と風鈴がなる。 「そういえば、夏休みになって10日ほど経つよな」 「んー。あーちゃんがこっちに来てからも、10日だね」 「俺、お前が夏休みの宿題してるとこ、1回も見たこと無いんだけど」 ちりりん。 「……………………………………」 今、絶対いいわけ考えてるよなコイツ。 「えっとね。ゆとり教育によって今年の夏休みは宿題無し」 うわすげえ、ゆとりすぎだろ義務教育。ねえよ。 「つまり全くやってないんだよな。お前。」 「ああやってないさ!悪い!?」 逆ギレかよ。 「だいたい夏休みの宿題なんて終了2日前に泣きながら やるもんじゃないか。それとも何、あーちゃんは ユウトウセイぽく宿題は夏休みが始まってすぐに 終わらせろとかそういう事言いたいのー? それなら抗議するよー、戦うよー、バリケード作って引きこもるよー」 引きこもるなよ立てこもれよ。というか籠城してる間に 夏休み終わったら元も子もないような気がするんだが。 「言っておくけど、夏休みの始まりに全部宿題終わらせるのも けして正しいわけじゃないんだぞ?」 あれってそもそも計画性培うのと長期の休みによる 学力低下を防ぐものなんだから、七月中に終わらせたりしたら 八月の一ヶ月で学力低下する。 八月の終わりに急いで宿題やるよかよっぽどタチが悪い。実は。 「というわけで、毎日コツコツ少しずつ。 これが正しい夏休みの過ごし方」 ほおー、と感心した声をあげるイトコ。
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