02.伸ばされた手のぬくもりが

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   ☆   ★   ☆ 「……あれ?」 気がついたらあーちゃんの姿がない。 こっちがちょっとたこやき屋行ってわたあめ屋寄って あいすくりん食べたりしてるうちに姿を消したらしい。 仕方ないなあ、もう、とため息。 そういえば、と思い出す。 前に兄ちゃんと祭来たときも兄ちゃんとはぐれたなあ。 あん時兄ちゃん一人で楽しんでたみたいだし、 あーちゃんも一人で楽しめる子だよねと こっちも一人でぶらぶらする事にする。 ――と。 どーん、と大きな打ち上げ花火がひとつ。 あ、花火、始まった。 どーん、どーんと次々に打ち上がる花火をじっと見る。 あ、ナイアガラの滝だー。 「あれ凄いねー」 あーちゃん、と言いかけ。 隣に誰も居ない事に気付く。 …………………… あ、そっか。居ないんだ。 そっか、ともう一度呟いて空を見上げる。 ……………… あ、そういえば花火がよく見えるポイントがあったんだっけ。 うん、見ながらそっち行こう。 歩き出す。けれど人が多すぎて進めない。 無理矢理かき分けようとして、ぎゅーって挟まれた。ぎゅーって。 「ぬーけーなーいー」 じたばたもがく。でも動けない。 と、何があったかいきなり人の波が動き出す。 「あ・あ・あ・あ・あー」 なーがーさーれーるー。 なんとか抜け出そうと、手を前に伸ばして。 「――見つけたっ!」 唐突に。 その手をつかまれた。
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