02.伸ばされた手のぬくもりが

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掴んだ相手を見る。 「……あーちゃん?」 「何やってんだ、全く」 呆れたような声に、ちょっとむっとする。 「それはこっちの台詞。  こっちがたこやき食べたりわたあめ食べたり  あいすくりん食べてる間に居なくなるとか  何考えてんの」 「……今の発言でどうして俺が悪い事になってんだ。  つうか、口にたこ焼きのソースがつきっぱなしだ」 言われて空いてる手で口元をぬぐう。 「これソース違うー。チョコバナナー」 「追加かよさらに」 「あ、あとりんご飴」 「………どんだけ食べてんだお前。  まあいい。見晴らし良いとこあるんだよな?  そこ行くから案内しろ。こっち方向で良いんだな?」 うん、と頷いたのを見届けてからそっちの方へと 歩き出すあーちゃん。手は掴まれたまま。 ぼーっとあーちゃんの横顔を見てて気付く。 乱れた呼吸と、夏とはいえちょっとかきすぎな汗。 気づく。 「……走り回ってたの?」 「当たり前だ。のんびりちんたら捜すわけにもいかんだろ」 へ? 「あーちゃん、捜してたの?はぐれたら置いてくんじゃ無かったの?」 さっきのあーちゃんの言葉を思い出しながらそう訊いたら。 「アホか」 ぺしんと、叩かれた。 叩いた時だけ、あーちゃんはこっちを見てた。 凄く怒った顔。 叩いた手でもう一度こっちの手を掴んで歩き出す。 うーん。 よくわかんない。 けれど。 伸ばされた手のぬくもりが。 それは夏のどうしようもなく暑い時期だというのに、 不思議と心地よくて。 「……えへ。」 顔がにやけた。 「あ、根性焼きが売ってるー」 「いや行こうとするなよ!合流したばっかで  何でまたはぐれるような行動とるのさこの馬鹿!  ってか『根性焼き売ってる』って何!?  何をどう売らんとしてるんだそのお店!?」
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