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「また、性懲りもなくチョコ作ってるの?」
バカにした口調で言う割に、試作品をぱくぱく口に運ぶのは、幼馴染の佑太だ。
2歳年下ながら、背はとっくに抜かれ、生意気な口をきく高校生に成長した。
昔は、可愛い弟みたいだったのに。
「ちょっと、食べないでよ」
私は、佑太の手から、チョコを取り返す。
「いいじゃん、こんなにあるんだし」
さらに手を伸ばそうとするので、皿ごとテーブルの反対へ押しやる。
「これは、ダメ」
「どうせ、今年も無駄になるんじゃないの?毎年、毎年、チョコあげては振られて。バレンタインなんて大っ嫌いって言ってるのに、なんで今年も作るかな。いい加減、その当たって砕けろな性格、直しなよ」
「私の勝手でしょ。あげたくなるんだもん」
「毎年愚痴聞かせられるオレの身にもなってよ。去年は、午前3時まで付き合わされたよね?その前は、ぎゃんぎゃん泣いて、オレの服、鼻水まみれにしたし。その前は、オールナイトでホラー映画見させられただろ。それから・・・」
「あー、もう、うるさい。その話はいいから」
私は、まだまだ続きそうな佑太の文句を遮る。
「なんだよ、毎年慰めてやってるオレに向かってうるさいって。今年は、どんなに泣いてても、相手してやらねー」
「別に、いつも頼んでないもん。勝手に、佑太が来てたんでしょ。ほら、出てって。集中したいの。チョコを渡すの、今年で最後にするんだから」
私は、佑太を台所から押し出した。
佑太は、急に興味をなくしたように、ふーんと呟くと、母のいるリビングへと出ていった。
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