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小さいころから、うちと佑太の家は家族ぐるみで付き合っていたので、佑太も勝手知ったる他人の家とばかりに、母とテレビを見始めた。
母が、今年は気合の入りが違うのよ、よっぽどいい男を見つけたんじゃない?なんて言っているのが聞こえる。
「お母さん、余計なこと言わないでよ」
私は、台所から大きな声でくぎを刺す。
はいはい、と母の生返事を聞き流して、私は手元に視線を戻して集中する。
ここからが、大事なところ。
チョコレートは、温度が命。
毎年、思い描いた結果にはならないバレンタインだけど、私のお菓子作りの腕だけは、めきめき上達した。
温度計で、湯煎にかけたチョコが40度になるのを確認する。
すかさず湯煎からおろして、今度は26度まで温度を下げる。
そして、最後は、もう一度湯煎に戻して、29度まで上げる。
チョコに艶が出てきたのを眺めて、私はうきうきしてくる。
よしよし、いい出来だ。
後は、型に流し込んで、固めれば出来上がり。
さあ、準備は終わった。
最後の決戦は、明日だ。
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