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河内さんがよく行く公園は、梅の木がたくさんある広くて綺麗な公園です。
その一角に、青々と菜の花が茂っているスペースがあります。
公園の管理事務所の方々のご厚意で、ヴェアがごはんに困らないようにしてくれているのです。
『カメちゃん、好きなだけ食べなね!』
管理事務所の方にそう言ってもらえるヴェアは幸せ者だなぁ、と河内さんは思います。
さて。本日もヴェアをその『お食事スペース』に放し、河内さんはすぐ横の梅を眺めていました。
今年の梅は例年に比べると開花は遅めですが、チラホラほころぶ白梅や紅梅を楽しむことができます。
そして来週には、恒例の『梅まつり』が催されるようです。
『梅まつり』に先駆け、公園には首からカメラをさげた花見客がたくさんやって来ます。
その殆どは、リタイヤした老夫婦という風情です。
(いくつになっても、こうして夫婦でお花見に来るなんて、仲良しだなぁ)
河内さんは、ヴェアを横目に老夫婦を羨望の眼差しで見詰めました。
すると、何やらあちらも、こちらに指をさして何かを言っているようです。
夫婦は先ほどまでとは違い、幾分早足で近づいてきました。
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