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「私ね、今８５歳なのよ。
でも、今日初めて、こんな綺麗なカメさん見たわ～」
「こりゃ、今年は縁起がいいなぁ」
夫婦はとても嬉しそうです。
「良いものを見せてもらった。ありがとう」
「いえいえ。私の方こそ、お二人の特別な日にお会いできて良かったです。
ありがとうございました！」
河内さんは温かな気持ちになって、夫婦が帰っていく姿を見送りました。
「さてと、そろそろ帰りますか？」
ヴェアに目をやると、当のヴェアは『ただ今取り込み中』とでも言いそうなくらい、夢中で草を食べています。
「こりゃ、当分帰れそうにないな・・・」
河内さんはひとりごちて、また梅を眺めました。
公園での日常的な一コマ。
けれど、先ほどの夫婦にとっては、今日は特別な日だ。
誰かの特別な日は、特別を共有した違う誰かにとっても特別な日になる。
そうやって、たくさんの特別な日に巡り会えたらいいなぁ、と河内さんは思いました。
（終）
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