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窓から入って来る幽霊
空間を長方形に切り取ったガラス窓から入ってくる、
太ってぶよぶよの弱い太陽の光と、
鼻腔≪びくう≫に忍び込んで、
生乾きのワカメを連想させるようなツンと刺激する潮の香が、
部屋を覆っていた。
夕闇が、
音もなく忍び寄って来ていたのだ。
全身をなめ尽くすような視線が、
山下 勉≪やました つとむ≫を無理やり目覚めさせた。
彼は、
もう薄暗くなった窓に向かって、
二階全体を揺るがすような大声で、
一人言を吐いた。
「何だか、
嫌悪感を押し付けてくるような、
重くて憂鬱な気分だなぁ。
しかも、
長い間、
誰かにジーッと見詰められているような気がする。
まだ、
夢を見ているのかなぁ? 俺は!」
刻一刻と太陽の灰色っぽいオレンジ色が、
彼の部屋全体を占領してくる。
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