第1章

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窓から入って来る幽霊  空間を長方形に切り取ったガラス窓から入ってくる、 太ってぶよぶよの弱い太陽の光と、 鼻腔≪びくう≫に忍び込んで、 生乾きのワカメを連想させるようなツンと刺激する潮の香が、 部屋を覆っていた。  夕闇が、 音もなく忍び寄って来ていたのだ。  全身をなめ尽くすような視線が、 山下 勉≪やました つとむ≫を無理やり目覚めさせた。  彼は、 もう薄暗くなった窓に向かって、 二階全体を揺るがすような大声で、 一人言を吐いた。 「何だか、 嫌悪感を押し付けてくるような、 重くて憂鬱な気分だなぁ。 しかも、 長い間、 誰かにジーッと見詰められているような気がする。 まだ、 夢を見ているのかなぁ? 俺は!」  刻一刻と太陽の灰色っぽいオレンジ色が、 彼の部屋全体を占領してくる。
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