第1章

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「また、 書きかけの卒業論文の夢かよー。 原稿に足が生えているように、 いくら逃げても凄いスピードで、 モタモタと逃げている俺を追いかけてくる。 いい加減にして欲しいよ、 ったく! でも、 いくら大声でぼやいても、 今までの経験からして、 悪夢が、 記憶から消えてなくならないのは、 俺自身よく心得ているが……。 コンチクショウ。 バカタレ。 気味の悪い夢が、 肌にまだまとわりついているようだ。 クソー、 体から悪夢が抜けないぞー。 昨晩も徹夜で『経済学方法論とその確率的合理性』という卒業論文に挑戦していたが、 ペンは遅々として進まないし、 おまけに金縛りにも苦しめられた。 ……ったく、 俺は踏んだり蹴ったりの目にあわされた!」  普通の人間の肺活量では、 こんなにも長いセリフを大声で喚く事なんて、 とても不可能だ。
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