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そう――勉は、
常人ではないのだ。
恐らく、
外見上では誰も区別なぞ出来ないだろうが。
今度は、
積もり積もったストレスを、
窓と反対側に大声で吐き捨てる。
そこは緑のモルタルの壁だ。
その時だった。
このアパートに四年ほどしか住んでいないのに……モルタルにヒビが入っている箇所を見つけ、
彼は、
ほんの一瞬だけ思った。
「アホタレ大家に、
文句を言ってやろう!」
それ程に、
勉は、
細かな事に気がつく神経質タイプだ。
しかし、
その時、
筋骨隆々のたくましい、
まだ三十歳代の大家の姿が脳裏に浮かんだ。
腕力で戦っても、
勝ち目がないのを自覚していた彼は、
自分の意気地なさを、
心の中でうまく正当化したのだ。
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