第1章

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 机上には、 参考にして卒論を書いていた九冊の繰り返し何度も何度も読んで、 ボロボロになった本が開かれている。 彼は、 多量の雨で多くの河川から流入し満杯になったダムが決壊し、 まるで洪水のように襲って来た悪夢に溺れていたのだ。  今回の悪夢は、 これまで経験した事がない程の熾烈≪しれつ≫極まる恐怖を伴っていた。 下着を絞ると、 グッショリと氷のように冷たくなった汗が落ちた。 バスタオルで、 全身をていねいに拭き、 風邪をひかないよう慌てて下着まで変えた。  花が咲き乱れる初夏にはまだまだ遠く、 今はやっと冬を脱した三月初旬だ。 三寒四温の季節だから、 寒い日もあれば暖かい日もあるのは、 当然だろう。
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