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昨夜か今朝かは定かでないが、
勉がタップリと味わった悪夢は……。
勉は、
二階の六畳間で寝ていた。
ガラス窓の方に、
顔を向けていたのだろう。
窓外に、
くすんだ着物姿をした若くて髪の長い半透明の女性が、
彼に背を向けて浮かんでいて、
まるで蚊が鳴いているような消え入りそうな声を、
直接、
彼の脳に入れてきたのだ。
「寒いから中に入れて下さいませ! 後生ですから、
お願い致します! どうか……私を温かそうな貴方様のお部屋に……」
艶っぽさがあるのに、
何となく虫唾≪むしず≫が走る、
おぞましい嫌悪感を抱かせる、
くぐもった低い声で、
繰り返し訴えてくる。
まるで喉を抑えつけられているような、
何ともイヤーナ声だ。
胃が跳ね上ったような不快感を、
勉は覚えたばかりでなく、
彼女の声を聞いた刹那、
意識が凍りついてしまった。
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