第1章

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 昨夜か今朝かは定かでないが、 勉がタップリと味わった悪夢は……。    勉は、 二階の六畳間で寝ていた。  ガラス窓の方に、 顔を向けていたのだろう。  窓外に、 くすんだ着物姿をした若くて髪の長い半透明の女性が、 彼に背を向けて浮かんでいて、 まるで蚊が鳴いているような消え入りそうな声を、 直接、 彼の脳に入れてきたのだ。 「寒いから中に入れて下さいませ! 後生ですから、 お願い致します! どうか……私を温かそうな貴方様のお部屋に……」  艶っぽさがあるのに、 何となく虫唾≪むしず≫が走る、 おぞましい嫌悪感を抱かせる、 くぐもった低い声で、 繰り返し訴えてくる。 まるで喉を抑えつけられているような、 何ともイヤーナ声だ。 胃が跳ね上ったような不快感を、 勉は覚えたばかりでなく、 彼女の声を聞いた刹那、 意識が凍りついてしまった。
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