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 まるで未来の車のパーツを先取りしたような、流線型を描くデスクの向こうでふんぞり返った魔女は言う。趣味の悪い網タイツを履いた足を組み、ちょっと小首を傾げてこちらを見る様はさも〝このくらい答えられて当然でしょ?〟と言いたげだ。 「あ、ああ、そうですね、ではえっと……」  だけどそんな質問をされたのは、私の転職活動20社目にしてこれが初めてのことだった。大学卒業後の面接ではよく訊かれた質問だけど、まさか27歳中途採用希望の行き遅れにそんな質問をしてくるなんて!  もうかれこれ4年近く就職戦線を離れていた私にとって、それは想定外の質問だった。だから思わずしどろもどろになってしまい、とにかく必死で言葉を探す。真っ先に浮かんだのは、 「そんなの、そこにある私の経歴を見て自分で考えたら?」  だったけど、まあ、さすがにこれはマズい。私は思わぬ展開に麻痺した思考をフル回転させて、どうにかこうにか二の句を継いだ。     
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