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 おかげで私は思いきりつんのめり、危うくダッシュボードに頭を打ちつけるところだった。いや、いっそそうして額を強打し、失神でもしてしまった方がマシだったかもしれない。  何せそうしなかったおかげで私はおよそ20分もの間、銃を持った見知らぬ男と楽しくドライブする羽目になった。  男は片側2車線の道路をものすごいスピードで疾走していく。深夜なのが幸いして車通りは少ないけれど、それにしたっていくらなんでも出しすぎだ。  おまけに先行車両が前を塞げば、男は「チッ」と舌打ちしていきなりハンドルを切る。私は思わず悲鳴を上げた。ぐねぐねとそれこそ酔っ払いのように蛇行した車は反対車線に飛び出し強引に前の車を抜き去ると、あわや対向車とぶつかるというところで元の車線へ帰還する。  そんなことが何度も続いて、私はその度に助手席で悲鳴を上げ続けた。そのうち何かの(たが)が外れ、車がちょっと揺れただけで悲鳴を上げるようになると、さすがにイラッとしたのだろう、ハンドルを握ったまま男が怒鳴りつけてくる。 「おいてめえ、さっきからギャーギャーうるせえぞ! 気が散るだろうが!」 「だったらもっとゆっくり走ってよ! このままじゃ命がいくらあっても足りないわ!」 「ケーサツに追われてんのにのんびり信号守って走るバカがどこにいんだよ!? いいから黙ってろ!」     
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