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プロローグ
……だめだ。
落ちた衝撃で肋骨が内蔵に刺さったらしい。車にはエアバッグの装備は無かった。
(まあ、ついていた所であの高さからは無理か)
笑いが込み上げる。
ごぼり
口から血の塊を吐き出す。かろうじて動く右手に受け目の前にかざした。
どう考えても助からない。
「あ…………や…………」
消えかける意識の中、自分を愛おしそうに見つめる綾乃の顔が浮かんだ。
(せめて最後の別れだけでも)
指は震えて携帯をうまく操れない。
(ごめん。綾乃。僕はもう戻れないみたいだ。)
智樹は必死に血のこびりつく携帯に、文字を綴っていく。電波が届くかどうかなどは既に智樹の頭にはない。
ただひたすら、愛しい人宛に言葉を紡ぐ。
愛してる
いつまでも
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