10人が本棚に入れています
本棚に追加
聖に向かって文句を言い掛けた時に、ドンッ! と、足の裏から突き上げるような衝撃が走った。竜也は驚き、反射的に、手すりを掴んだ。聖は不意打ちだったらしく、前のめりの体勢で、竜也に向かって倒れ込んで来た。
「危ないっ!」
竜也は聖を胸で受け止めた。偶然にも抱き合うような体勢になってしまい、竜也は鼓動が、聖に伝わってしまうのではないかと、不安になるくらいドクドクと心臓が波打っていた。
「大丈夫か?」
「……うん、ごめん、ビックリした。今のって地震?」
聖はゆっくりと体を離し、竜也を見つめた。聖の顔がすぐ近くにあって、竜也の鼓動は更に高鳴る。目鼻立ちがはっきりとしていて、睫毛が長い。きっと普通に女の子をしていたら、物凄い美人なのにと、勿体なくなる。そんなことを思った自分が恥ずかしくて、竜也は俯いた。
キィイイと鈍い音が響き、聖と竜也は同時に顔を上げた。立ち入り禁止のはずの屋上の扉が、ゆっくりと開かれたのだ。
「あ……」
扉の向こう側にいた人物が間抜けな声を上げる。目元が隠れる位、長い前髪が風になびいている。黒髪の華奢で小柄な男子生徒だった。猫背で、胸のあたりで、鞄を抱きかかえている。
最初のコメントを投稿しよう!