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彼は同じクラスの___、
「二年三組の亡霊だ」
聖が彼の名前を呼ぶ前に、竜也が呟いた。
「バカッ!」
聖は思わず叫んで、竜也の頭をぺちんと叩いた。二年三組の亡霊は、クラスの男子が、おとなしくて無口な彼を茶化すのに付けた、陰のあだ名だった。
彼の名前は、変わった苗字の……空知! そうだ。空知兎月くん。夜空に浮かんだ満月に、兎の影が浮かんでいる。そんな情景が浮かぶような、素敵な名前の男の子だ。
「ごめんね、空知くん。バカ竜也が、失礼なことを」
竜也の後頭部を押さえつけ、無理矢理、頭を下げさせる。
「いてて、何だよ。俺、何か失礼なこと言った? つーか、聖、今、俺のことバカって言ったろ? お前の方が失礼だろうが!」
竜也は聖に頭を押え付けられながら、わあわあと喚いた。前髪で目元が完全に隠れている兎月の表情は全く読めなかったが、彼は一言も発せずに、二人を避けるように階段を駆け下りようとしたその時、二度目の衝撃が来た。
ドンッ! と、一度目に劣らない衝撃だった。直下型地震のような大きな縦の揺れに、兎月は、バランスを崩し、前に倒れた。
亡霊が襲い掛かって来たと、竜也は思った。
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