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兎月が聖と竜也に向かって被さるように、頭上から落ちて来た。ぶつかる! そう思った聖は、両手を頭の上でクロスし、目を瞑った。
「うわぁあああ」
竜也の叫ぶ声が聞こえた。兎月は、二人を巻き込むような形で、階段を転げ落ちた。最初に床に叩き付けられた時に、壁際に重ねられた机や椅子に頭をぶつけなかったのは、不幸中の幸いかもしれない。
三階の廊下まで転げ落ちて来た時には、頭と肩と、背中に腰と、体中に痛みが走った。絶対、後で痣になるやつだこれと、聖は、やっとのことで起き上がると、膝小僧を擦った。
あれ? 僕、ズボンなんて履いていただろうか?
聖は自分の膝を擦りながら、目を開く。
「え? 何で? どういうこと?」
目の前に倒れているのは、制服姿の女子生徒。少し茶色掛かったショートヘアに、スカートから伸びた足。既視感があるというか、僕じゃないか?
「ひえぇぇぇええ」
起き上がった竜也が、頬の辺りに両手を添え、情けない声を上げた。顔が恐怖で強張っている。
「ボボボ……ボクが、ななななな何で?」
肩を震わせて怯えながら、恐る恐る手を伸ばす。伸ばした先には兎月の顔があった。
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