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「も、もう一度、試して、みますか?」
竜也が訊ねる。
「いや、止めておこう。たぶん、階段から落ちたことが、入れ替わった原因じゃないのかもしれない。何度も転げ落ちて、怪我でもしたら、それこそオオゴトになっちゃうし……」
兎月がブレザーのポケットをまさぐると、ポケットティッシュを発見した。消費者金融会社の広告の乗ったティッシュを、竜也に差し出すと、唇の端を指差した。
「空知くん、唇から血が出てるよ」
「あ、ありがとうございます」
竜也はお礼を言って受け取った。顔を顰めながら、血を拭うと、
「わ、わわ鷲尾くんの顔なのに、傷物にしてしまってすみません」
と深々と頭を下げた。
「別に気にするなよ。俺、男だし。むしろ、聖の顔じゃなくて良かったよ」
「ど、どうしたらいいでしょうか? ……これから」
竜也は泣き出しそうな声で、二人を交互に見た。
「とりあえずは、このままで生活するしかないよな? どうやったら戻るかが解らねぇんだからさ」
聖が両腕を組み、溜息を吐いた。
「僕たちが入れ替わってしまったっていう事実は、みんなには秘密にしておいた方がいいよね?」
「ていうか、『入れ替わってるんだ』って、言っても誰も信じてくれないだろ?」
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