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「ほらよ」
「あ、ありがとうございます」
兎月は丁寧に頭を下げて、お礼を述べた。
「えっ、空知の家ってここなの?」
バス停を降りてすぐ、
「ここがボクの家です」
と兎月に案内されたのは、コンシェルジュ付きの高級マンションだった。大通りに面したガラス戸の玄関を入り、インターホンの前で、カードキーを鞄の中から取り出し、慣れた手つきで、開錠する。
「まま、マンションのキーはカードになっていて、ここにタッチをすれば、開きます。部屋は1101号室、11階です」
おどおどしながら、コンシェルジュに会釈した兎月は、
「こっちです」
と、エレベーターホールに進んだ。大理石の床に、コンシェルジュのいる受付けには、立派な壷花が活けてある。シャンデリアの下にあるソファでは、住人である小学生くらいの男の子たちが、DSを互いに覗き込みながら、ゲームを楽しんでいた。
「すごい。ホテルみたい」
聖は辺りをキョロキョロしながら、前を歩く兎月の後を付いて行った。今日はここに泊まるんだと思うと、緊急事態だと言うのに、少し嬉しい気もする。
「ボーとしてるなよ。キチンと入口までの道順を覚えて置かないと、迷子になるぞ」
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