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おっと、言い過ぎただろうか? 聖は慌てて、口元を押えた。スマホを覗き込んでいた二人が、ムッとした表情で、こちらを見る。
「葛西に言われたくないよ!」
「まりっぺ、葛西はさぁ、イケメンですからぁ、目下に見てるんだよ。ようたんのことをさぁ」
まりっぺこと乾麻里は嫌味たっぷりに、続ける。
「イケメン葛西様だもんねぇ?」
「乾、その言い方、マジ辞めろって、でないと……」
聖が言い切る前に、「聖___」と、扉の方で聖の名を呼ぶ声がした。顔を上げると、それは幼馴染みの鷲尾竜也だった。
「ストーカー鷲尾が、イケメン葛西を呼んでいる」
津田の余計な一言を、睨みで返すと、聖は席を立った。
「何?」
扉の前にいる竜也にぶっきらぼうに訊ねる。竜也は少したじろぎながらも、廊下を指して告げた。
「葛西センパイに話があるってよ。一年生のかわいこちゃんから」
竜也の指先を視線で追うと、廊下に小柄な女の子が立っていた。両足を内股に、指先をモジモジさせながら、下を向いている。目を細めてみると、彼女が顔を上げた瞬間に目が合い、「ひゃあ」と、かわいこちゃんは女の子らしい声を上げた。
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