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「話って何?」
彼女の前に立ち、聖は訊ねる。
「こ、ここじゃ、恥ずかし過ぎるので……屋上階段で……いいですか?」
聖はふぅと溜息を吐いた。扉からこちらの様子を伺う竜也の視線を、背中越しに感じる。ウザイなと、思った。
「……いいけど、僕、あんまり時間ないんだけど……」
「すぐ済みますので!」
先程の恥じらいから打って変わって、彼女は強い口調で告げた。聖の手を引き、廊下をぐんぐん歩き、屋上階段へと誘った。
校舎の三階に位置する聖の教室から、屋上へと続く階段は、生徒の行き来が全くないせいか、埃っぽく、不要な机や椅子が無造作に重なった物置になっていた。踊り場まで上って来ると、彼女は振り向き、聖と対峙した。屋上へと続く扉の窓から、光が差し込み、舞い上がる埃が見えた。
「私、葛西先輩のことが好きなんです」
深呼吸で気持ちを落ち着かせた後で、はっきりとした声で、彼女は言った。またか……聖は不躾にも、そう思ってしまった。
「僕のことが、好きだって? 僕、君の名前も知らないのだけれど」
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