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陽太は竜也が下げようとした皿を、自分の方へ引き寄せた。
「なんか、今の兎月、別人みたいだよなぁ、今までは俺が何を言っても、じっと耐えてたのに」
トーストを頬張りながら、陽太の何気ない言葉に、竜也はどきりとする。
「……新しい友達が出来て、俺自身も変わりたいって思ったんだ」
陽太を伺いながら、竜也は答えた。これは、前に兎月が言っていた言葉だった。「ふうん」と、陽太は興味のなさそうな相槌を打ったが、
「いいんじゃね? 友達も、本気でお前のこと心配してくれてたし。あの、アホ面の男の方? 俺のことやたら詳しいし、いいこと言ってたじゃねえか」
アホ面の男って、俺のことか? つい、竜也はムッとした表情になってしまう。
「アホ面じゃねぇよ、爽やかイケメンと言え」
「羨ましかったよ。いい友達が出来て良かったな。俺の周りには、うんざりする位、自分のことしか考えて奴が多すぎるから。ま、俺も含めてだけどな」
爽やかイケメンのくだりはさらりと流して、陽太はトーストを齧りながら、ぼやいた。
マンションの前から通学バスに乗り込むと、今日は異様に車内が混み合っていた。
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